No.108 「何を建てるか」より「誰に貸すか」から発想

「誰に貸すか」を優先の土地活用。戸建賃貸が選ばれた理由

 建築費高騰が続く中、土地活用の選択肢として戸建賃貸を検討する場合があります。ただ、戸建てを建てれば高い家賃で貸せるわけではありません。重要なのは、その地域で「誰が、どのような住まいを求めているのか」の見極めです。

 今回は、長野県佐久市で実際に戸建賃貸を企画した事例について、エイブルネットワーク佐久店を運営する株式会社センデンの大渕店長に話を聞きました。

移住需要に着目

戸建賃貸の事例イメージ

――どのような相談から始まったのでしょうか。

「賃貸オーナーから『土地を取得して、さらに賃貸経営を拡大したい』という相談を受けたことがきっかけです」

 大渕店長が着目したのが、佐久市ならではの住宅需要でした。新幹線で東京方面へアクセスでき、自然豊かな環境を求めて移住する子育て世帯も見られます。さらに当時、インターナショナルスクールの開校が予定されていました。

「全国から子育て世帯が移り住む可能性があると考え、一般的なアパートではなく、こうした世帯の暮らしに合う戸建賃貸を提案しました」

スクールバスの動線も調査

――土地はどのように選んだのですか。

「学校への通いやすさを考え、スクールバスのルートや停留所を聞き取り、その動線を踏まえて土地を選びました」

 想定する入居者を具体的に設定したことで、必要な立地や住宅の形も明確になりました。

子育て世帯と戸建ての相性

――戸建てにしたメリットはどこにありますか。

「小さなお子さんがいる家庭では、上下階や隣室への生活音を気にされます。戸建てならその負担を抑えやすく、庭や駐車スペースも確保できます」

 間取りにも暮らしを反映しました。広いリビングに加え、ベビーカーやキャンプ用品、スタッドレスタイヤなどをしまえる大きな土間収納を設置。長野県の寒さを考慮し、断熱性能など基本性能も重視しました。
 こうした特徴によって差別化を図り、同社によると、周辺のアパートより月額3~5万円程度高い賃料でも入居につながっているといいます。

設備は増やしすぎない

――高い家賃に合わせて、設備も充実させたのでしょうか。

「何でも付ければいいとは考えていません。必要なものにはお金をかけますが、将来の修繕負担まで考えて選んでいます」
 廊下などを減らして居住スペースを確保する一方、全館空調や食器洗浄乾燥機などは、将来の故障や交換費用を考慮して採用を見送りました。また、建物には木造を採用し、建築コストにも配慮しています。

高めの家賃でも選ばれる理由

――周辺より家賃が高くても入居につながるのはなぜでしょうか。

「例えば、子どもが学校に通う数年間だけ佐久市で暮らしたいという家庭もあります」
 居住期間がある程度決まっていれば、住宅を購入せず、必要な期間だけ希望する住環境を賃貸で確保したいというニーズがあります。今回の事例では、こうした需要と戸建ての居住性が合致しました。

「誰に貸すか」から考える

 今回の事例は、初めから戸建賃貸ありきで計画したものではありません。地域の変化を捉え、想定する入居者を定め、その家族が求める立地や暮らしを考えた結果、戸建賃貸が選ばれました。
 土地活用では「何を建てるか」だけでなく、「誰に住んでもらうのか」から逆算する視点も重要といえそうです。次号では、戸建賃貸のデメリットや注意点について考えます。

ご注意

※本記事は2026年8月24日時点の内容をもとに作成しています。