遺言書に記載しておくことで手続きを円滑に

意外と知らない遺言の落とし穴。書いただけでは遺言は動かない!?

 相続対策として遺言書を作成する賃貸オーナーは少なくありません。しかし、遺言書は「書いて終わり」ではなく、その内容を実現するための手続きが必要です。その役割を担うのが「遺言執行者」です。その意義について説明します。

遺言を執行するとは?

 遺言執行とは、遺言書に書かれた内容を具体的に実行する手続きのことです。たとえば、預貯金の解約、不動産の名義変更、株式や投資信託の移管、受遺者への財産の引き渡し、相続人への通知などが含まれます。

 賃貸オーナーの場合は、アパートやマンション、貸家、駐車場、管理口座、借入金、敷金、管理会社との契約などが関係するため、遺言執行の重要性は特に高くなります。
報酬については、遺言書の中で定めることができます。

どういう人を指定するか

 遺言執行者として相続人、親族、弁護士・司法書士などの専門家、信託銀行などを指定できます。遺言で指定されていない場合や指定された人が辞退した場合には、家庭裁判所に選任を申し立てることができます。それぞれの執行者について説明します。

相続人の一人

 事情をよく知っており、費用も抑えやすい反面、他の相続人との利害対立がある場合は注意が必要です。

相続人でない親族・知人

 相続人間の対立を避けたい場合や、相続人が高齢・遠方・実務に不慣れな場合に考えられます。

弁護士

 相続人間で争いが予想される場合、遺留分の問題がある場合、遺言内容が複雑な場合には、弁護士が選ばれることがあります。

信託銀行

 「遺言信託」という商品があります。遺言書の作成支援、保管、相続発生時の遺言執行がセットとなっている信託銀行などが行う有料サービスです。

各種資産の名義変更手続き

 不動産については、遺言書の内容に従い、法務局で相続登記や遺贈による登記を行います。相続登記は2024年4月1日から義務化されています。預貯金は金融機関で払い戻し請求や解約を行い、証券口座や保険契約についても、それぞれの機関で手続きを行います。遺言執行者がいる場合、相続人全員が個別に手続きを行うよりも、手続きの混乱を抑えやすくなります。

賃貸オーナーの場合の問題
「経営の空白」「準確定申告」

 相続発生後、誰が家賃を受け取るのか、修繕判断をするのか、管理会社と連絡を取るのか、入居者対応をするのかが曖昧になると、経営に支障が出ます。被相続人名義の家賃入金口座が凍結されることもあり、ローン返済、修繕費支払い、管理委託料の支払いに影響する場合もあります。また、死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行い、納税する必要があります。

空白を埋めるために

 遺言執行者に求められるのは、すべての手続きを一人で行う能力ではありません。家賃収入の確認や管理会社との連絡は管理会社、準確定申告や相続税申告は税理士、不動産登記は司法書士が担うのが一般的です。遺言執行者は、これらの関係者と連携し、必要な資料収集と役割分担を進める調整役としての役割も期待されます。

まとめ

 遺言執行者は、相続後の混乱を防ぎ、遺言者の意思を実現するための重要な存在です。賃貸経営を止めない機能ともなり得ます。遺言書作成の段階で司法書士・弁護士・相続に詳しい税理士に確認すると良いでしょう。

ご注意

※本記事は2026年7月27日時点の情報をもとに作成しています。最新の情報は法務省ホームページなどでご確認ください。

参考:遺言執行者の権限の明確化等(法務省ホームページからPDFダウンロード)