No.95 語られない温暖化対策がもたらす影響

建築費の高騰が止まらない! 死角となっている要因とは?

 建築費の高騰が、発注者・施工会社双方の負担となっていますが、背景には、人手不足や円安、中東問題による輸入建材価格の上昇等に加え、省エネ規制があります。本稿で、建築費高騰の背景と今後の見通しを解説します。

中東問題の影響

 ホルムズ海峡の閉鎖に伴う原油輸入への影響は、政府や石油業界の対応により必要量は概ね確保される見通しです。しかし、メーカーや流通業者が先行して資材確保に動くことで、一部の品目が一時的に品薄となり、これが工事予定の乱れやコスト高につながっているという指摘もあります。局所的な混乱には注意が必要です。

(※2026年5月時点の状況です)

省エネ住宅の義務化

 建築費の高騰は、工賃の上昇や建材資材市況の要因に加え、温暖化対策に伴う「省エネ規制の強化」も大きな要因です。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年4月には、第一段階として全ての新築住宅を省エネ基準適合住宅とすることが義務化されました。

 「省エネ基準適合住宅」とは、断熱性能等級が4以上、かつ、一次エネルギー消費量等級が4以上の性能を有する住宅のことです。断熱性能等級4というのは、かつて公的に最高水準のものでした。これが現在では最低基準となったということは大きな変化といえます。

段階的に引き上げられる省エネ性能

 省エネ規制は今後さらに強化され、2030年には、ZEH水準への引き上げが見込まれています。「ZEH水準」とは、断熱性能等級が5以上、かつ、一次エネルギー消費量等級が6以上の性能を有し、省エネ基準適合住宅よりもさらに高い性能が求められています。

 なお、本来の「ZEH(Zero Energy House)」とは太陽光発電などにより年間の一次エネルギー収支がゼロである住宅を示しますが、「ZEH水準」においては発電設備の設置までは必須とされていません。

ZEH水準はなぜコストを押し上げるのか

 ZEH水準住宅は、高性能な断熱材や窓サッシの採用に加え、高効率な給湯器や空調設備の導入が必要となり、性能を抑えた廉価品の採用によってコストダウンすることができなくなります。

 加えて、建物の高断熱化・高気密化には精度の高い施工技術が求められ、対応可能な人材が限られることも価格上昇に拍車をかけます。

建築費は構造的に上昇圧力が続く

 近年の建築費高騰の理由は、人手不足や円安といった市況変動で語られることが多くありました。これらの要因だけを見ると、例えば外国人の採用や円高への揺り戻し等により、いずれ建築費も下がるのではないかという期待の余地があります。

 しかしながら、建物性能の引き上げという制度要因は、建築費に構造的に上昇圧力がかかることを示します。今後、仮に為替や資材価格が一定程度落ち着いても、性能基準の上昇が続く以上、コストの下押し要因にはなりにくいでしょう。

 ZEH水準への移行は、政策として既定路線であり、少なくとも2030年に向けては建築費の上昇圧力が続くと見込まれます。賃貸経営においては、中長期的な要因を見据えた投資判断が欠かせません。

ご注意

※本記事は2026年6月1日時点で作成しています。