No.86 活用してくれる組織に資産を託し、社会に恩返し

将来への希望と願いを託す遺贈寄付(レガシーギフト)

 不動産や金融資産を子や孫だけでなく、社会のためにも役立てたい―。そんな思いを形にする方法のひとつが、日本でも関心が高まりつつある「遺贈寄付(レガシーギフト)」。今回は、その背景や手続き、検討のポイントを紹介します。

資産と思いを社会に生かす仕組み

 遺贈寄付とは、遺言書や信託契約を通じて、自分の財産の一部を社会に役立つ活動へ寄付する仕組みです。寄付先は公益法人、学校法人、社会福祉法人、自治体などさまざまです。近年は「自分の資産を社会に役立てたい」という価値観の広がりとともに、遺贈寄付への関心も高まっています。業界団体の調査では、遺贈寄付の件数は年々増加しており、2022年には1,000件を超えたとの報告もあります。

遺贈寄付を考えるきっかけ

 遺贈寄付を検討する理由はさまざまです。「税金では使い道を指定できないが、交通遺児支援や難病患者の支援など、自分の思いに沿う活動に役立ててほしい」という声があるほか、美術品や歴史資料を家族だけで保管するのではなく、博物館などで研究・保存・公開してもらいたいと考える人もいます。

 さらに、「相続をきっかけに家族関係が悪化する例を見てきた」「高齢の親から高齢の子へ財産が引き継がれる“老老相続”よりも、社会に役立てたい」と考える人もいます。こうした人々に共通しているのは、自分の資産を社会に役立てたいという思いです。

遺言書の作成が不可欠

 遺贈寄付を実現するためには、遺言書または信託契約を作成しておく必要があります。これらがなければ寄付の意思は実現されず、財産は法定相続人に分配されることになります。確実に実行するためには、公正証書遺言を作成し、寄付先の法人名や寄付方法、割合などを具体的に記しておくことが重要です。また、どの資産を誰に遺すかを明確にする「特定遺贈」としておくと手続きが分かりやすくなります。その際には、法定相続人の最低限の取り分である「遺留分」にも配慮が必要です。

受贈先との事前の協議が大事

 例えば「所有しているアパートを〇〇法人に遺贈する」と遺言書に書いても、受け取る側が賃貸経営を行えるとは限りません。結果として寄付を辞退される可能性もあります。そのため、あらかじめ寄付の意向を伝え、受け入れの可否や方法について相談しておくことが大切です。特に不動産を遺贈する場合は、管理や売却方法なども事前に確認しておくと安心です。

法定相続人がいない場合の注意点
―負債も引き継ぐため包括遺贈は受け入れ先が限られる-

 法定相続人がいない場合、財産は家庭裁判所が選任する相続財産清算人によって管理され、売却などによる換価・精算を経て最終的に国庫に帰属します。相続人不在による国庫帰属額は増加傾向にあり、2022年には約768億円に達しました。

 こうした背景の下で、資産を一括して公益法人へ遺贈寄付する選択肢(包括遺贈)を検討することがあります。この場合、借入金などの負債も同時に引き継ぐ可能性があるため、受け入れが難しいケースも少なくありません。事前に負債について丁寧に説明し、公益法人の受け入れの可否を確認することが不可欠です。

最後に

 人生の集大成として、自身の資産を社会に還元する――。遺贈寄付は、資産を社会の未来に活かす一つの選択肢といえるでしょう。検討する際には、全国レガシーギフト協会の相談窓口など専門機関を活用し、専門家と相談しながら進めると安心です。

ご注意

※本記事は2026年3月23日時点の情報をもとに作成しています。