No.71 個人契約から法人契約へ替えたいと言われたら

現入居者・新規入居者が法人契約を希望したときに押さえるべき4点

 個人契約で入居している方から「法人契約へ変更したい」と申し出があった場合、個人の住居用しか扱ってこなかった賃貸オーナーは、戸惑うかもしれません。法人契約へ切り替える際に確認すべき4つのポイントを説明します。

1.契約相手先の信用をしっかりと見極める

 個人契約から法人契約に切り替える場合は、新たな賃貸借契約の締結、または名義変更契約書の作成が必要です。法人契約では、保証人を立てる代わりに「保証会社の利用」や「代表者個人の連帯保証」を求めるのが一般的です。

 保証会社の審査では、次のような書類の提出が必要になることがあります。

  • 登記事項証明書(旧・登記簿謄本)
    法人の実在性・事業内容の確認に活用できます。
  • 代表者の本人確認書類
    法人の責任者確認のためです。
  • 直近の決算書類
    経営状況を把握するためです。

 使用目的や支払い能力の確認を丁寧に行い、トラブルの芽を事前に摘んでおくことが大切です。

2.他の入居者への影響にも配慮を

 法人契約に変わると、使用目的が「住居」だけでなく「事務所」「店舗」「社宅」などにある場合があります。多数の来訪者がある業種や、電話・来客応対などで音が発生する業態は、他の入居者に不安や迷惑を与える可能性があります。

 あらかじめ使用目的や営業時間などを明確にし、守ってもらうルールについて話し合い、合意内容を記録として残しておきましょう。こうした配慮が、トラブル防止につながります。

3.事業利用は消費税の扱いが変わる

 住居用の賃料は「消費税の非課税取引」ですが、事務所・店舗などの事業用として貸す場合は「課税取引」となります。そのため、賃料に消費税を加えて請求する必要があります。ただし、法人契約であっても実際の用途が社宅等の「居住用」であれば非課税扱いのままです。事務所兼住宅の場合には、建物のうち事業用に使われる部分の面積比をもとに、家賃を課税部分と非課税部分に按分します。

 また、前々年の課税売上高(家賃収入など)が1000万円を超えると原則として課税事業者となり、消費税の申告が必要になります。1000万円以下でも「課税事業者選択届出書」を提出すれば任意で課税事業者になることも可能です。

4.インボイス制度にも要注意

 法人側から「インボイス(適格請求書)の発行」を求められるケースが増えています。

 発行するには、オーナー自身が「適格請求書発行事業者」として登録している必要があります。

 登録していない場合、法人側は仕入れ税額控除を受けられず、契約交渉で不利になることも。請求書に記載すべき内容(消費税額や登録番号など)も増えるため、自身の登録状況と対応方針を確認しておきましょう。

最後に:社宅契約では“入居者の交代”にも注意

 法人契約の社宅では、入居者が入れ替わるケースがあります。オーナーや管理会社に無断で他の社員が住むといったトラブルもあるため、契約書では「入居者変更時の届出」や「再審査の義務」などを明記しておくと安心です。「法人契約だから安心」と思わず、契約条件や使用実態を丁寧にチェックし、適切に管理していくことが、トラブルを防ぎ資産価値を守る第一歩です。

ご注意

※本記事は2025年11月時点の情報に基づいています。
※必要書類の名称や取得方法は変更される場合があります。最新情報は法務省(登記情報提供制度の概要について)公式ページをご確認ください。