No.106 縮小する住宅市場。地主への提案はどう変わる?
住宅着工統計から読み解く。ハウスメーカーの営業姿勢の変化
建築費の高騰などさまざまな理由によって、住宅の着工件数は近年減少傾向にあります。市場が縮小する中、土地オーナーや賃貸経営者への営業戦略にも変化が見られます。住宅着工統計から見えてくる市場の変化について考えてみます。
減少が続く新設住宅着工戸数
国土交通省が公表している建築着工統計調査報告(表)によると、2025年の新設住宅着工戸数は740,667戸となり、前年比▲6.5%の減少となりました。全体では3年連続の減少です。5年前と比較すると、持家や分譲住宅が大きく減る中、貸家は+1.1%とほぼ同水準を維持しています。
持ち家、分譲の苦戦の理由
持家は、少子化による需要減少に加え、建築費や土地価格の上昇と可処分所得減少による住宅ローン負担への不安が重なり、個人が注文住宅を建てにくくなっていることなどが背景にあります。分譲マンションの事業採算は、都市部を中心とした用地取得難と建築費高騰により厳しくなっています。分譲戸建ては、郊外でも土地価格と建築費が上がり、子育て世帯など購入層の予算とのズレが広がったことで、事業者が新規供給に慎重になっています。
貸家が比較的健闘している理由
5年前と比較すると、貸家はほぼ同水準を維持しています。その背景には、元々土地を持っている地主にとっては土地取得費の影響を受けにくいこと、賃料上昇への期待があること、法人が建築主となるケースが多いことなどがあります。そのため、ハウスメーカーにとって貸家分野は相対的に重要性を増しています。
地主への営業提案はより深化
ハウスメーカー各社にとって、重要な営業対象であった地主・賃貸オーナーの位置づけが、住宅市場の縮小によってさらに高まっていくと推察されます。大手各社の事業構造でも、賃貸住宅・管理・リフォームなどのストック型、土地活用型の事業は重要な収益源になっています。たとえば積水ハウスの2025年度決算資料では、賃貸・事業用建物事業について、豊富な受注残を背景に増収増益となり、利益率の改善や受注の堅調な推移を説明しています。
今後は、単に「賃貸住宅を建てませんか」という提案だけでなく、築古アパートの建替え、省エネ性能を高めた賃貸住宅、戸建て賃貸、管理受託、リフォーム、資産組み替えなど、より幅広い提案が増えそうです。地主側から見れば、提案の頻度や内容が多様化・高度化する局面と捉えるべきでしょう。
広がる選択肢を活かして
ハウスメーカーの底力を比較する
ハウスメーカー各社が賃貸オーナー向けの営業を強化すれば、地主側の交渉力は高まりやすくなります。土地活用を検討する際は、複数社から提案を受け、建築費だけで判断せず、建物の差別化、アフターサービスの内容、長期修繕への対応、家賃設定、出口戦略まで含めて比較することが重要です。受注競争が強まる今こそ、各社の提案を冷静に見極める姿勢が求められます。
ご注意
※本記事は2026年8月17日時点の内容をもとに作成しています。詳しくは国土交通省建築・住宅関係統計ページなどでご確認ください。
