No.81 住み心地の改善と事故予防のために大事な情報

ヒートショック対策に注目。賃貸でも「窓断熱」が当たり前に

 「ヒートショック」への関心が高まっています。これは持ち家に限っておらず、賃貸住宅においても無視できないテーマです。高齢者の問題と思われがちですが、賃貸経営においても重要になってきている点をご紹介します。

ヒートショックの危険性

 暖かい居室から寒い脱衣所や浴室へ移動した際、思わず体が震えることがあります。こうした急激な温度差が引き金となる身体反応が、いわゆるヒートショックです。

 寒さによって血管が収縮すると血圧は上昇し、そこから熱い湯に浸かると今度は血管が拡張して血圧が低下します。この急激な血圧変動が、浴室内での転倒や浴槽内での溺水につながることが指摘されています。さらに、湯の水圧や立ち上がり動作によって脳への血流が一時的に低下し、意識障害を起こすケースもあります。

高齢者でなくても油断できない

 警察庁の公表データでは、自宅で亡くなり、発見までに時間を要したケースは令和6年で約7.6万人に上ります。年齢が上がるほど件数は増えますが、75歳未満も半数近くを占めている点は見逃せません。

 背景のひとつとして指摘されているのが、飲酒後の入浴です。そのため消費者庁では、飲酒後の入浴を控えるよう注意喚起を行っています。アルコールは血圧を下げやすく、判断力も鈍らせるため、温度差による血圧変動と重なることで、立ちくらみや失神、転倒のリスクを高めます。

賃貸オーナーとしてできること

 賃貸オーナーに求められるのは、事故の芽を「室内の温度差」から減らす視点です。浴室だけを暖めても、居室や廊下、脱衣所が冷え切っていると温度差は解消されません。

 住戸全体の熱環境を底上げするうえで、熱の出入りが大きい開口部、すなわち窓への対策は合理的です。内窓の設置やガラス交換といった窓断熱は、室温の低下を抑え、冷気感を和らげる効果が期待できます。入浴前後の移動時の身体負担を軽減する点でも有効です。床下断熱などと併用すれば、より効果は高まります。新築だけでなく、既存住宅の部分断熱でも、比較的低コストの改修で大きな効果が体感できます。

Z世代も「冬の寒さ」を敬遠

 若年層にとっても寒さは大きな不満要因です。一般財団法人 住宅改良開発公社の2024年調査「賃貸経営者に知ってほしいZ世代が求める賃貸住宅」によると、賃貸住宅への不満点として「冬寒い」が3割を超え、「隣の音が聞こえる」を上回って第1位となっています。寒さ対策は、高齢者向けの配慮にとどまらず、幅広い世代に共通するニーズと言えます。

窓断熱の本当の意義

 窓断熱対策は、事故予防だけでなく、結露を防止しや外部からの騒音緩和にもなり、入居者の居住性が大いに改善されます。冷暖房の消費電力を抑え、電気代を下げることも入居者募集の際にアピールポイントになります。断熱への対応は、賃貸経営における「投資」と捉えるべきでしょう。

 これらの改修については、国や自治体による補助金や税制優遇の整備も進んでおり、取り組みやすい環境が整いつつあります。国は「先進的窓リノベ事業」を今年も実施する方向であり、自治体においても、例えば東京都では窓断熱の工事費の3分の2が助成されます。

ご注意

※本記事は2026年2月16日時点の法制度をもとに作成しています。今後の法改正や運用方針によって内容が変更される場合があります。詳細は国土交通省 住宅省エネキャンペーンのホームページをご確認ください。