No.74 賃貸経営は単純に「利益=家賃収入-経費」?
賃貸経営における利益とキャッシュフローの考え方
税務申告を税理士に依頼している方が多いと思いますが、経営者としてお金の流れの全体像の把握は、安定した賃貸経営のためには不可欠。ここでは、賃貸経営を「税務会計」と「キャッシュフロー会計」の2つの視点から整理します。
会計はひとつではありません
賃貸経営の数字を理解する際には、主に2つがあります。
1.税務会計
確定申告を前提に、税法に沿って所得を計算する会計です。「正しく納税するための数字」を示すもので、計算ルールが細かく定められています。収入から必要経費を差し引いた「不動産所得」を算出し、最終的な税額が決まります。敷金の扱い、未収家賃の計上、大規模修繕の費用化、ローン返済のうち利息のみが経費になる点など、税務独自のルールがある点が特徴です。
2.管理会計(キャッシュフロー会計)
オーナー自身が経営判断を行うための考え方で、実際に現金が増えたか減ったかを重視します。預金通帳の残高を基準に、「現金が増える取引=+のキャッシュフロー」「減る取引=マイナスのキャッシュフロー」として捉えます。ローン元本返済のように、税務上は経費でなくても現金は減るため、財務会計とキャッシュフロー会計の数字が一致しないことがあります。
キャッシュフローを改善するには
経営の健全性を判断するには、税務上の利益以上に、キャッシュフローが継続的にプラスかどうかが重要です。プラスが増え、マイナスを抑えられるほど経営は安定します。
プラスを増やす方法
- 家賃水準の見直し、設備改善による付加価値向上
- 未収家賃の早期回収
- 空室期間の短縮(募集条件・広告戦略の改善)
- 駐車場や物置など余剰スペースの活用
マイナスを減らす方法
- 費用対効果を踏まえた、修繕やサービスの選択肢の検討
- 青色申告の特典(控除や経費扱いの幅が広がる制度)を使って、ムダなく&損なく税金を計算
- 金融機関と相談し返済条件の変更を検討
節税策の中には、税額は減っても現金支出が増えるケースもあるため、「手元に残る現金」で判断することが大切です。
プラスのキャッシュフローの使い道
生まれた資金は、生活費だけでなく将来に備え計画的に活用することが望まれます。
- 大規模修繕への積立
- 原状回復・設備更新の準備
- 買い替え・建替えや追加投資の原資
「いつ、どのくらいの修繕費が必要か」を中長期で見通し計画的に資金を確保することが安定経営につながります。
4.マイナスのキャッシュフローの考え方
都心ワンルームなどでは、ローン返済により毎月1〜3万円のマイナスになるケースもあります。「積立感覚」と捉える考え方もありますが、妥当性は個々の状況により異なります。将来の資産価値や金利動向、家計バランス、複数物件の総合キャッシュフローなどを踏まえ、保有価値を総合的に判断する必要があります。
まとめ
税務会計は「正しく申告するための数字」、キャッシュフロー会計は「経営判断に役立つ数字」です。どちらか一方ではなく、両面から賃貸経営を点検することで、改善点や将来戦略がより明確になります。
ご注意
※本記事は2025年12月8日時点の情報をもとに作成しています。税務処理や個別の申告・経営判断については、お付き合いのある税理士や専門家へご確認ください。
