No.99 行政はこれからどこに人を集めようとしているのか
政策のメッセージ性が強い制度。知られざる居住誘導区域とは?
多くの自治体では「居住誘導区域」と呼ばれるエリアを指定しています。ということは、相対的に居住誘導の対象とならない区域も存在するということです。今回は、あまり知られていない「居住誘導区域」について解説します。
居住誘導区域が導入された背景
居住誘導区域とは、人口減少社会において、一定の人口密度を維持しながら、生活サービスや地域コミュニティを持続的に確保するため、居住を誘導していく区域のことです。制度は2014年に創設されました。
背景にあるのは人口減少と高齢化です。人口密度が低下すると、道路や上下水道、学校、病院などの都市機能を広範囲で維持することが難しくなります。そこで国は、居住や都市機能を一定エリアに集約する「コンパクトシティ」の考え方を導入しました。
居住誘導区域の制度設計
居住誘導区域は、都市再生特別措置法に基づき、自治体が策定する「立地適正化計画」の中で定められます。多くの自治体では、市街化区域の大部分が居住誘導区域に指定されています。
ただし、居住誘導区域外だからといって建築が禁止されるわけではありません。区域外でも住宅建築は可能であり、一定規模以上の開発などで届出が必要となる程度です。
つまり、居住誘導区域は建築規制を目的とした制度ではなく、今後どのエリアに人を集めていくのかという行政の方向性を示す制度といえます。
居住誘導区域外になるケース
市街化区域内でも例外的に居住誘導区域外となる地域があります。代表的なのが、土砂災害特別警戒区域(災害レッドゾーン)などの災害リスクが高い地域です。
そのため、市街化区域内に土地を所有しているからといって、必ずしも居住誘導区域内とは限りません。一度、自治体が公表している立地適正化計画を確認してみることをおすすめします。
居住誘導区域の現状と課題
居住誘導区域は、あくまで誘導を目的とした制度であり、強い強制力はありません。そのため、制度開始から10年以上が経過した現在でも、人口や居住地の集約が大きく進んだとは言い難い状況です。
一方で、強い規制を設ければ、区域の内外で資産価値に大きな差が生じる可能性があります。そのため行政も慎重な対応を取っており、現状ではソフトな誘導策が中心となっています。
居住誘導区域の将来性
居住誘導区域は、将来の都市整備や公共投資の方向性を示します。居住誘導区域には、まちづくり支援制度や補助制度が活用されるケースがあります。そのため、行政や民間事業者による投資が優先的に検討されやすい地域といえます。今後、こうした投資の積み重ねによって、区域の内外で利便性や住みやすさに差が生じる可能性があります。
賃貸経営者としてどう受け止めるか
賃貸経営において、「この地域に将来も人が住み続けるのか」という視点は大切です。自物件の立地が居住誘導区域内であれば一つの安心材料となります。一方で、区域外の物件が直ちに悪いというわけではなく、特定のニーズに合う物件であれば十分に持続可能であることもあります。自治体が描く町の将来像を確認することが、長期的な経営判断にとって欠かせません。
ご注意
※本記事は2026年6月29日時点の情報をもとに作成しています。
