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相続税対策の新常識。5年ルールの創設でどう変わる?

 令和8年度税制改革の中で、いわゆる「5年ルール」が特に注目されています。相続開始前の短期間で取得・新築した賃貸物件への評価方法の改正です。相続直前の対策は通用しなくなり、相続税対策に大きな影響を与えます。

「5年ルール」の新設

 貸付用不動産は相続税評価を行う際に、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価等で計算され、時価よりも大幅に低く評価されることから、相続税節税のために賃貸物件を購入したり、新築したりすることが行われてきました。

 しかし、2026年度(令和8年度)の税制改正で、相続開始前5年以内に取得または新築した賃貸物件は、従来のような評価額の圧縮が認められにくくなり、実態に即した価額、すなわち時価に近い水準で評価される方向が明確になりました。

 これが、いわゆる「5年ルール」です。5年超の取得・新築であれば従来通りの評価方法です。

5年ルールが導入された背景

 この動きの背景には、2022年4月19日の最高裁判決があります。被相続人が相続開始の数年前に賃貸マンションを取得し、相続税評価額を大きく圧縮した事案について、課税庁による評価方法の否認が適法と判断されました。形式上は従来の評価方法に従っていても、租税負担の軽減を主たる目的とした場合には否認され得ることが示された点が大きなポイントです。

明確になった相続対策の境界ライン

 当該判決は年限を示していませんでしたが、今回のいわゆる「5年ルール」でその境界を5年と明確化しました。

 従来は、賃貸物件であれば貸家建付地や貸家評価により大きく評価額を下げることができ、都市部では時価1億円の物件が3,000万~4,000万円程度になるケースもありましたが、今後は8,000万円程度になることから、こうした圧縮効果は限定的になると考えられます。

「5年ルール」の詳細と経過措置

 相続開始の5年以内に取得/新築した収益物件の相続税評価額は原則時価ですが、課税上の問題がないと認められる場合には、取得価額を基に地価の変動等を踏まえて調整した金額を用いることも可能とされています。例えば、地価に大きな変動がないケースでは、取得価額の概ね8割程度が評価額の目安となる場合もあります。

 なお、経過措置として2027年1月1日の5年以上前から所有している土地に新築した家屋(2027年1月1日に建築中のものを含む)には、5年ルールは適用されません。

今後の相続対策で求められること

 今回の見直しにより明確になったのは、「相続直前の対策は通用しにくい」という点です。裏を返せば、相続対策はこれまで以上に中長期的な視点で取り組む必要があります。賃貸物件の取得を検討する場合も、単なる節税目的ではなく、収益性や資産価値といった本来の投資判断がより重要になるでしょう。

 相続対策を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。新たなルールを正しく理解したうえで、早期に準備を進めることが、これからの賃貸経営において重要なポイントとなります。

 なお、節税にとらわれて進めるのではなく、円滑な分割対策、納税資金確保をふまえたトータルの相続対策が望まれます。

ご注意

※本記事は令和7年12月発表の税制大綱に基づき、2026年4月27日時点で作成しています。今後の法改正や運用方針によって内容が変更される場合があります。詳細は財務省 公式サイトをご確認ください。